今年もこの季節がやってきたので、備忘録の意味も込めて俺的ベスト5を挙げてみる。
本家の1位は『ダンジョン飯』『ヲタクに恋は難しい』と、割と予想通りの結果だった。
5位『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』浅野いにお
前作『おやすみプンプン』で浅野いにおという漫画家を見限った人も少なくないと思う。かくいう自分もその一人だ。
そんな悪い余韻を引きずったままスタートした本作は、正直言って「物語として破綻していなければ許してやろう」という極めて低いハードルを設けていた。なのでこの現時点での評価が正当なのか自分でもいまいちよくわかっていない。
相変わらず意味深に聞こえるだけの台詞回しに頼りがちだし、やたらとネットカルチャー(というかまとめサイト系)に迎合したような物言いが目立つのも鼻につく。とはいえ「2011年以降の日本の空気感」の表現は見事だし、これはいにおにしかできないことだと思う。あとは門出さんがとてもかわいい。これ重要。
3巻で物語が大きく動いたので、あとは破綻せずこのまま進んでくれることを祈るばかり。頼むよいにお、二度目はないぞ。
高校野球の名門校に入学した新入生たちが、昭和イズム溢れる縦社会のシゴキに耐えながら野球道を歩んでいく話……と書くと昔ながらのスポ根もののように感じるが、本作はその「シゴキ」をデフォルメして描くことでコメディタッチに仕上げているところが面白い。筆者は本当にPL学園野球部出身らしいので、ところどころにノンフィクションが含まれた野球版『銀の匙』とでもいうべき作品なのかもしれない。
そしてこの作品の最重要ポイントは「関西弁」にある。舞台が大阪なので主人公もクールなイケメンも威厳ある先輩も、全員コッテコテの関西弁で喋る。この関西弁特有の「濃ゆさ」が、シゴキをコミカルに描くという作風をしっかりと支えているのである。『ナニワ金融道』だって、全員標準語で喋ってたら後世に残る名作にはならなかっただろう。
2015年の志村貴子はノリにノッていた。出版社をまたぎつつ単行本8冊連続刊行とかやらかしていたのだが、その中から1冊選べと言われたらこれになる。
本作は『娘の家出』と同じく、舞台や登場人物を共有しつつも主人公は毎回入れ替わるというオムニバス形式をとっている。舞台は宝塚を思わせる歌劇学校。舞台が特殊である故に、少女特有の負の感情―例えば嫉妬や執着、諦めといったものが生々しく描かれているのが大きな特徴だ。しかしタイトルに「淡」という漢字があるようにあくまでそれは淡々と描かれているため、作品そのものに重苦しい印象はまったくない。さすがの志村節である。
2位『鉄子の育て方』やまもり文雄(原作)/かわすみひろし(画)
画像は3巻のものだが、明らかな打ち切りエンドだったので3巻の評価が高いというわけでは決してない。とはいえ、打ち切りであったことを除けば作品そのものの評価はとても高い。自分はかわすみひろし作品そのものが好きで、彼の描く女性キャラはいわゆる萌え系美少女ではないにも関わらずとんでもなく可愛いと思っているのだが、どうにも人気には恵まれないようで代表作である『大使閣下の料理人』以外は大抵全3巻止まりなのが悲しい。『プラチナ』も『営業の牧田です。』も良作だったのに……。
さて本作。題材が鉄道、登場人物はみんな鉄オタ、鉄道にまつわる実在の著名人がなぜか女性化して登場……と読者をふるいにかける要素満載だが、実は鉄道知識皆無でもオタク群像劇として楽しめるのがいいところ。そして何より、オタクを極端に美化も卑下もせずニュートラルな視点から描いているのがいい。最近のオタクを題材にした作品はオタク側に寄りすぎてる気がするので(ニーズを考えれば当たり前だけど)、こういう作品は大事だと思うのです。
1位『波よ聞いてくれ』沙村広明
コメディ作家・沙村広明の真骨頂。もうエログロとか描かなくていいよ!
ただのカレー屋の店員だったお姉さんがひょんなことからラジオで番組を持つことに……という、まるで「たまたまガンダムに乗ったら動かせたのでそのままパイロットになりました」みたいな荒唐無稽なお話だが、「ありえねーよ」なんて感想は野暮というもの。本作の魅力は圧倒的なまでの「勢い」と「密度」にある。ここでいう「密度」とは作画の緻密さではなく、毎ページ怒涛の勢いで詰め込まれたボケとツッコミと小ネタのこと。ミナレさんの言動にツッコミを入れ始めた時点でもう読者の負けだ。
「無職の飲むビールは鉄サビの味がする」
「カメってすげえな、自分のウンコ浮いてる水の中で餌食ってるんだもんなあ」
このへんのセリフでニヤリとできるなら一気に読む価値あり。そうでなければスルーしていい。
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